この事例の依頼主
50代 男性
被害者の属性 50代(男性 会社役員)事故の分類 信号待ちで停車中,トラックに追突された負傷部位 首傷病名 頚椎捻挫後遺障害等級 14級9号賠償金額 360万事故から1年経過後,既に事前認定で14級9号の認定を受けた段階で,ラグーンへご相談に来られました。保険会社から提示された示談金額が適正な金額であるのか,素人では分からないので確認して欲しいというご相談内容でした。提示金額を確認したところ,裁判基準に比べると,明らかに低額な提示金額でした。そこで,ラグーンでは,どの損害項目が適正な金額に比べてどのくらい低額であるのか,その場でヒアリングをしつつ説明させていただきました。具体的なイメージをもっていただき,現在置かれている状況を理解していただいたうえで,ラグーンにご依頼されることになりました。
ラグーンでは,被害者からお預かりしていた資料を元に,損害賠償請求する金額の計算書案を作成しました。これをご本人に確認していただき,速やかに保険会社に送付しました。保険会社の回答は,当初の提示金額を一定程度増額したものでしたが,後遺障害逸失利益について,被害者が会社役員であることを根拠に低額な算定しかなされていませんでした。保険会社の回答を受けて,ラグーンでは,被害者から会社での勤務実態をヒアリングするとともに,会社の規模等を調査し,類似の裁判例を添付する等して,当方の主張が適正な賠償金額であることの裏付けとなる主張・立証を行ないました。その結果,保険会社からの回答に時間がかかったものの,保険会社から,概ね当方の主張内容に沿う内容の示談案が再提示されることとなりました。役員報酬の全額を労働の対価として認定されなかった点については残念でしたが,ご本人が納得をし,早期解決を希望したことから,訴訟提起時のリスク等も考慮して,再提示された示談案にて和解に至りました。ご相談から解決まで,約3カ月の期間でした。
交通事故により後遺障害を負った事案の中では,頚椎捻挫(いわゆるむち打ち損傷)等を原因として局部に神経症状を残すものとして14級9号の後遺障害等級の認定を受けたという事案が件数としては最も多く存在します。いわゆるむち打ち損傷の事案では,他覚的な所見が認められない場合,大半が非該当か,後遺障害の認定がなされたとしても14級9号の認定になります。14級9号は,元々,他の後遺障害等級とは異質な性質を有しています。つまり,他覚的な所見がなくても,事故態様,通院状況,治療状況等から症状の残存が推測できる場合には,後遺障害として扱われるのです。しかし,後遺障害の存在を推測できる場合に過ぎませんから,保険会社としては,他の後遺障害とは異なる点を強調し,少しでも低い金額で示談しようと,様々な理由をつけて,裁判基準からすれば低額な示談案を提示してきます。14級9号は,後遺障害でありながら,後遺障害の中では比較的軽微な後遺障害という位置付けで,もっとも適正な評価がされにくい後遺障害であると考えられます。実際に,今回のケースでも,当初の示談提示額は,裁判基準の半分以下の金額でした。また,本件では,被害者が会社役員であったという点が特徴的でした。会社役員である場合,役員報酬のうち労働対価部分の範囲について争点となることがあります。このようなケースでは,「会社役員だけど全額が労働対価である(つまり,基礎収入から控除される利益配当部分は存在しない)」と主張したくなるのは当然ですが,その一点ばりではいけません。適正な賠償を受けるためには,なぜその主張が正しいのか,証拠をもって主張・立証して,保険会社を説得しなければなりません。本件では,裁判例を添付するとともに,被害者の勤務実態を詳細に主張することで,概ね当方の主張する後遺障害逸失利益の金額を前提とした和解が成立した事案でした。